Mの部屋
第10回 レーザーの安定性 最終回
レーザーは物理の塊なので物理を理解しないと難しいですが、ここではそこな難しいレーザーの開発をのぞき見るコーナーです。
レーザー加工を行うためには光源元となるレーザー発振器の安定性を高める必要があります。
今回は共振器内のクリーン度についてお届けします。

■共振器内のクリーン度を保つためには絶対に開封しない

レーザー共振器の中の汚染物質に対する配慮について、もう少し考えてみたいと思います。 ユーザーのかたが共振器の調整をしなくても良いように工夫された、いわゆるメンテナンスフリーを謳うレーザー装置では、整えられた環境のクリーンルームで組み立てられているので、長期にわたって、性能が安定に維持できる、という説明がなされていたりします。はたして、これで本当にいいのでしょうか?

通常のクリーンルームでは、粉塵の対策はされていますが、匂いはどうでしょう?クリーンルームの壁や天井、あらゆる所にシリコーン樹脂が使用されています。実はこれが曲者です。このシリコーン樹脂の“匂い“の中には酸素と珪素が含まれていますこれがいろいろな部品の表面に付着して共振器の容器の中に入り込み、光学部品の表面にたまたま吸着してレーザーが照射されて酸化が進むと、言い方が乱暴かもしれませんが、非常に細かい石英砂の粒になって表面にくっついてしまいます。こうなると精度の高い光学部品は、本来の性能を発揮できず、せっかく精密に調整された共振器でも所望のレーザー発振が維持できません。 ならば、清浄な乾燥窒素を封入すれば大丈夫でしょうか?ここでも注意が必要です封入するガスの取り回しに使用するチューブはシリコーン樹脂であったりすると、その“匂い”まで封入してしまいかねません。シーリングのためのOリングの素材 にも入っていたりします。臭いのもとを断つにも断ちようがないことになってしまいます。冷蔵庫ではないですが、やはり活性炭に代表される様な吸着剤がどうしても必要になります。

また、シリコーン樹脂は生活のあらゆる場面で便利に使用されています。化粧品のスプレーにも使用されているようです。
このように、周到に製造されたレーザー共振器を通常の環境で開封することは非常に危険です。良い子のみなさんはゼッタイにふたを開けないでください。そして必ずメーカーさんにお問い合わせくださいね。



目には見えないガスがどこからともなく



顕微鏡で光学結晶表面を見てみると


少し難しい話をしてしまうこともありますがお許し下さい。