Mの部屋
第8回 レーザーの安定性7
レーザーは物理の塊なので物理を理解しないと難しいですが、ここではそこな難しいレーザーの開発をのぞき見るコーナーです。
レーザー加工を行うためには光源元となるレーザー発振器の安定性を高める必要があります。
今回は共振器ミラーの調整についてお届けします。

■共振器ミラーの調整はものすごくシビア

レーザー共振器を構成する要素で最も大切なものは全反射ミラーと出力ミラーではないでしょうか。レーザー媒体で増幅するレーザー光を全反射ミラー(リアミラー)と部分透過の出力ミラー(アウトプットミラー)の間で往復させて、所望のモードのレーザービームを出力ミラーの裏側から出力する姿は、車でいえば、あたかもリアミラーが駆動輪で、出力ミラーが操舵輪、前輪にあたるように思えます。(レーザー媒体の位置によってFRかRRがきまってくるのでしょう)固体レーザーの場合、レーザー媒体の熱レンズ効果をリアミラーの反射面に曲率をつけて補正する場合が多く、不安定共振器のような特殊なものを除いて、RR(リアエンジンリアドライブ)形式のものが基本になります。一方、出力ミラーは基本的には平面ミラーが好適です。というのも、共振器に閉じ込められた電磁波としてのレーザービームの等位相波面が平面になる部分(要するにビームウェイストです)、を出力ミラー表面に設定することができ、出力されるレーザービームの出発点が出力表面と考えることができ、レーザー光をガイドする光学系の設計者が安心できます。

このように出力ミラーはレーザービームの性質に大きく影響するので、レーザー装置を製造する場合、非常に安定な固定がされていることが望ましいと言えます。(この点は車の操舵輪のメタファーと矛盾しますが・・・)レーザー媒体の状態変化には出力ミラー以外の反射ミラーの角度微調で対応することが次善の策でしょう。しかし、最も望ましいのは共振器を構成する反射ミラーすべてを温度変化、経時変化に対して強固に固定することです。この場合、角度の安定性に対する要求が最も厳しく、高精度のレーザービームを出力する装置では、100マイクロラディアンの角度レベルの安定性が要求されます。4,267m遠方からゴルフボールの両端を見る角度がこの角度ですから、精密なレーザー装置の中では光子のホールインワンが光のスピードで起きていると言えるでしょう。



出力ミラーはレーザービームの性質に大きく影響



光学調整をイメージ


少し難しい話をしてしまうこともありますがお許し下さい。