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レーザー加工技術

レーザー発振器を利用したレーザー加工は日々様々な研究が行われています。発振器の種類による加工結果の違い、パルス幅や繰り返し周波数による違い、波長による違い、光学系の違い、その他様々な工夫による違いなど研究の方向性も様々です。ここではそのような研究から生まれたレーザー加工の研究結果をご紹介していきたいと思います。
ピコ秒ファイバーレーザーによる加工 レーザー加工技術No.014


シンプルな構造で信頼性が高くビーム品質が良いため、ファイバーレーザーが注目されています。通常ファイバーレーザーは数100Wクラスの製品が多いのですが、今回は2.5Wという低出力ながら1.5ピコ秒というパルス幅のレーザーを使用して、特徴やメリットについて紹介するとともに加工について紹介したいと思います。

ファイバーレーザーはシンプルな構造、高い信頼性、高ビーム品質と従来の固体レーザーに比べ高い性能を持っております。そのため各メーカーからも新製品が続々と登場しております。そしてもうひとつ注目されているレーザーとしてピコ秒レーザーがあります。今回のレーザーはファイバーレーザーでありながらピコ秒レーザーという両方を併せ持ったピコ秒ファイバーレーザーであり、今回はこのレーザーを使用して性能を見るための実験を行いました。

はじめに
 ファイバーレーザーと言えば高出力でも高品質なビームが得られるためYAGレーザーよりも小さな出力で金属の切断や穴開けが行えるレーザーとして金属加工業界で注目されています。しかしながらその高い性能を微細加工へ用いるには熱が大きな壁となっており、使えないと考えられておりましたが、最近ファイバーレーザー技術を使ったピコ秒レーザーが登場しました。以下ではファイバーレーザーおよびピコ秒レーザーの構造を紹介し、実際に材料加工を行った内容について紹介します。

ファイバーレーザー
 ファイバーレーザーとは共振器部分にファイバーを用いたレーザーの総称で、YbイオンやErイオンをドープしたシングルモードファイバのクラッドを2重構造にし、内側のクラッドにLDの励起光を流し込むようにして励起することで驚異的な効率で高品質なレーザー出力が得られるレーザーです。シングルモードの場合ファイバーのコア径は数ミクロンで発振波長はYbの場合、1ミクロンから1.1ミクロン、Erの場合1.5ミクロン領域です。Qスイッチやモードロックで短い時間幅のパルスを出力できるものもあります。 ファイバー内で励起されるため固体レーザーに比べ光学部品数も少なく振動にも強いレーザーです。


[図1]ファイバーレーザーの構造

ピコ秒レーザー
 ピコ秒レーザーとは短パルスレーザーの1種でパルス幅がピコ秒領域にあるレーザー発振器のことです。材料に左右されるがパルス幅が10ピコ秒より短いと熱影響が伝達する前に発振が終わるため熱影響がほとんど無い加工が可能になります。またパルス幅が短いのでピークパワーが大きく難加工材への加工も可能になります。以下[図2]にピコ秒レーザーの構造の概略を示します。フェムト秒レーザー同様にチャープパルス増幅(CPA, chirped pulse amplification)技術が使われています。

[図2]ピコ秒レーザーの構造

加工実験
加工実験では以下のような配置で光学系を用意しました。特別な光学系も用いず、ビームエキスパンダやアパーチャーなども使わず、生ビームをフォーカスレンズまで導きサンプルへ照射するレイアウトとしました。光学系をシンプルにすることにより、わかりやすい実験結果となりますし、装置化を考えた場合コストを抑えられます。

[図3]実験に用いた光学系およびレイアウト図


[図4]レーザー加工の様子
スペシャルムービー:
ピコ秒ファイバーレーザーによる薄膜除去加工の様子

薄膜除去加工
 まずピコ秒レーザーの加工として薄膜除去加工を行いました。合成石英基板の上に50nmのα-Si が成膜されたサンプルを用いてナノ秒レーザーとの加工結果の違いを確認しました。ピコ秒レーザーは波長1552nmの赤外線レーザーなので、ナノ秒レーザーも波長1064nmのYAG基本波を用いました。薄膜のように非常に薄い材料を除去するには膜の部分だけをアブレーションしなくては下の基板に影響を及ぼしてしまいます。エネルギーコントロールも大事ですがビーム品質が悪いとエッジ部の加工がきれいに行えません。今回はこの部分にも注目し加工を行いました。以下に加工結果の写真を示します。


[図5]ナノ秒レーザーによる薄膜除去加工


[図6]ピコ秒レーザーによる薄膜除去加工
 写真撮影の条件のため色が全く違いますが、同じ基板を用いて実験を行っています。また写真はどちらも500倍になっており、[図5]のナノ秒レーザーの加工では加工線幅が約100μm、 [図6]のピコ秒レーザーの加工では加工線幅が約10μmと10倍も違います。同じ条件の光学系を用意できなかったので大きな差が出ましたが、適切な光学系であれば差は数倍で収まるでしょう。しかし、ナノ秒レーザーの加工では膜だけでなく基板へも影響が出ています。それぞれの加工条件は以下の通りです。

  ナノ秒レーザー ピコ秒レーザー
波長 1064nm 1552nm
パルスエネルギー 300μJ 1μJ
繰り返し周波数 3kHz 100kHz
ステージ送り速度 50mm/sec 50mm/sec
加工幅 100μm 10μm


[図7]薄膜除去加工拡大
 ナノ秒レーザーによる加工ではパルスエネルギーを閾値限界まで下げましたがそれでも基板へのダメージが見られました。しかもビーム品質のせいかエッジ部分が波打っているのが分かります。ピコ秒レーザーによる加工の写真を1000倍まで拡大した写真を[図7]に示します。拡大してもエッジのシャープさが分かります。そして基板へのダメージも全く見られません。加工線幅が10μmなので両端のデブリ部も1μm程度となっています。半導体プロセスに使えるレベルまで至っていませんが、液晶などのフラットパネルのプロセスへの応用であれば十分利用出来るのではないでしょうか。ムービーを見ても加工が行われているかどうか肉眼では確認できないほどの様子となっています。
 今回の加工ではパルスエネルギーの違いも大きな差が分かりました。ピークパワーが加工にどれだけ効いているか実感出来る内容となりました。スポット径の差があったとしてもこれだけの差になるとはピコ秒レーザーのすごさが分かりました。
ポリイミドへの加工
 次に樹脂の代表としてポリイミドへの加工を行いました。ポリイミドはフレキシブル基板にも利用されている素材で、電子機器の小型化、高性能化に伴い実装密度が高密度化になってきており、穴開けや切断についても微細化が要求されています。現在は微細なサイズはUV固体レーザーで加工されています。さらなる微細化が進んだときにピコ秒レーザーで加工することにより、10μm以下の穴開けや切断が行えるようになります。下の[図8]のポリイミドの切断加工条件は以下の通りです。
 この条件の加工では線幅を10μmを達成することは出来なかったですが、ステージ速度を高速化することにより達成できるのではないかと思います。加工後のエッジも熱影響無く、きれいな仕上がりとなり生産への利用も可能ではないでしょうか。


[図8]ピコ秒レーザーによるポリイミドの加工
パルスエネルギー 5μJ
繰り返し周波数 500kHz
ステージ送り速度 50mm/sec
加工幅 17μm

ポリイミド加工時の条件と結果

サファイアスクライビング加工
 次にサファイアのスクライビング加工を行いました。サファイアは青色LEDなどに利用されている材料ですが、堅い基板のため切断にレーザーが利用されている。しかし、LEDの場合には熱影響による光量損失というデメリットもあり、狭い線幅で加工することに熱影響を従来のレーザーの1/5程度に抑えられれば従来のレーザーに置き換わる可能性も秘めている。下の[図9]のサファイアスクライビング加工の条件は以下の通りです。
 今回の実験では高速なステージを用意できなかったので決して早い条件ではないですが、加工幅わずか4μmで加工が行えました。デブリの幅を入れても10μm以下となっており、条件をしっかり詰めていけば、熱影響による光量損失がほとんど無い加工が行える可能性があり、現在のレーザーに置き換わる可能性も見えました。


[図9]サファイアスクライビング加工
パルスエネルギー 5μJ
繰り返し周波数 500kHz
ステージ送り速度 50mm/sec
加工幅 4μm

ポリイミド加工時の条件と結果

無アルカリガラススクライビング加工
 次に無アルカリガラスのスクライビング加工を行いました。無アルカリガラスはその名の通りアルカリ成分を含まないガラスで、一般のソーダ石灰ガラスに比べ、熱膨張率が小さいガラスです。主な用途はディスプレイ用ガラス基板で、スクライビング加工の大きなマーケットがあります。高速に正確にチッピングの無い加工が行えれば産業への利用が可能となります。下の[図10]の無アルカリガラススクライビング加工の条件は以下の通りです。
 今回の実験では厚さ150μmのガラスを使用しましたが、実際利用されているガラスの厚みは500μm以上あり、加工速度や材料厚さを考えると前実験となってしまいましたが、他のレーザーより細い線幅で加工が行え、割断がきれいに出来るため、もう少し条件を詰めていけば、次期高出力モデルの登場により他のレーザーに対抗出来るかもしれません。


[図10]割断面の写真
パルスエネルギー 5μJ
繰り返し周波数 250kHz
ステージ送り速度 2mm/sec
加工幅 15μm

無アルカリガラススクライビング加工時の条件と結果

まとめ
以上で今回の加工実験の報告を終わりますが、ピコ秒レーザーの可能性を改めて知ることが出来ました。ピコ秒レーザーの性能を美味く引き出せるアプリケーションであれば他のレーザーの置き換えも含めて様々なマーケットで利用可能と思われます。特に簡単な光学系だけで10μm以下の加工が行えるのは様々なアプリケーションで応用の幅が拡げられると思います。今後、出力も拡大される予定であり、もう少し厚みのある材料への応用も期待されます。
 今回のピコ秒ファイバーレーザーはこれまでレーザーでも難しかった加工を可能にしてくれるレーザーと期待しています。

ピコ秒レーザー Discovery

上記の加工で使用したレーザーはアメリカのRaydiance社がリリースするDiscoveryシリーズです。このDiscovery(ディスカバリー)シリーズは、アイセーフ波長で発振するデスクトップサイズの極短パルスファイバレーザーです。 短いウォームアップタイムと動作環境に依存しない特性は、既存の極短パルスレーザーが持ち得なかった「利便性」を提供します。 繰返し周波数を幅広く設定でき全帯域で安定したパルスを出力するため、理化学・医療・微細加工など幅広い分野に応用いただけます。

特長

・小型コンパクト ・短いウォームアップタイム
・高い信頼性と高い安定性
・繰り返し周波数を変えても変化しないパルス幅

主な仕様

レーザ種類:ピコ秒ファイバーレーザー 波長: 1552nm 出力:2.5W@500kHz
繰返し周波数:1Hz-500kHz パルス幅:1.5ps
パルスエネルギー5μJ
ビーム品質:TEM00 M2=1.3
冷却方式:水冷(専用循環チラー)

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これらの製品に興味があるようでしたらレーザー・コンシェルジェへご連絡ください。
こちら→info@laser-concierge.com

編集部から
パルスエネルギーがわずか5μJでありながら加工できてしまうのを実際に見るとピコ秒によるピークパワーのすごさにビックリしてしまいます。ナノ秒のレーザーだとパルスエネルギー5μJではほとんどの材料に対して何も起こらないのにピコ秒ではサクサク加工してしまいます。もちろん深い加工は難しいものの微細な線幅や微細な穴のサイズはナノ秒ではここまでできません。久しぶりにわくわくする加工が行えて楽しめる実験となりました。もちろんすべての加工にピコ秒ファイバーレーザーがマッチするわけではないですが、特性にあった加工であればピカイチの加工性能を発揮する可能性を秘めています。今後さらに注目が集まる加工用レーザーの一つと思いますので、この種のレーザーには皆さんも目を離すことなく注目していただきたいと思います。



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