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レーザー加工技術

レーザー発振器を利用したレーザー加工は日々様々な研究が行われています。発振器の種類による加工結果の違い、パルス幅や繰り返し周波数による違い、波長による違い、光学系の違い、その他様々な工夫による違いなど研究の方向性も様々です。ここではそのような研究から生まれたレーザー加工の研究結果をご紹介していきたいと思います。
フェムト秒レーザーによる微細周期構造の形成 レーザー加工技術No.009



フェムト秒レーザーを利用することでレーザー波長と同程度の微細なグレーティング構造を安定して形成することが可能です。
そしてこのような微細周期構造を付加することで、摺動部品のトライボロジー特性を向上させ、無駄に消費される摩擦エネルギーの大幅な低減が図れます。さらに薄膜の密着性向上、微小物体の凝着力低減、細胞感受性の付与など、微細周期構造の形成技術は、材料部品に多様な表面機能を付加する表面改質技術です。


微細加工技術として将来性が期待されているフェムト秒レーザー加工といえば、「多光子吸収」や「極低熱影響」といったキーワードが広く知られるところですが、今回は表面波の干渉で形成されるナノサイズの「微細周期構造」を利用した表面改質技術について紹介します。

はじめに
フェムト秒レーザーは1000兆分の1秒という極端に短い時間単位の中にレーザーパルスを圧縮した光源であり、わずかな出力でも瞬間的には発電所に匹敵するパワーを有する高強度性と短パルス性に特徴がある[図1]、[図2]。


[図1] フェムト秒レーザーの短パルス性

[図2] フェムト秒レーザーの高強度性

レーザー加工におけるその利点は、材料の熱拡散速度に対して十分に早くエネルギー注入できることにあり、熱影響が極めて小さく、熱伝導率の高い金属材料に対しても高精度な加工が可能である[図3][図4]。また、多光子吸収によりガラスなど透明材料に対して表面に全く損傷を与えることなく内部加工が可能であるなど、これまでのレーザー加工にはない特長を有している。

試料:Siウエハ
加工形状:1ショットデンプル、φ4μm
試料:SUS304平板
加工形状:深溝、幅20μmアスペクト比5

[図3] Surfbeat R による微細加工例 1

[図4] Surfbeat R による微細加工例 2

このような特徴を生かしフェムト秒レーザー加工を普及させるためには従来工法からの置き換えではなく、フェムト秒レーザーでしかできない高付加価値アプリケーションの創成が不可欠である。フェムト秒レーザーによる微細加工はまだまだ研究段階にあり大きな市場を形成するには時間がかかるものが多いと思われる中、アブレーションしきい値近傍のフルエンスで自己組織的に形成される周期構造は、低出力で極表層のみを加工するだけで様々な表面機能を示すことから、実用化に近い高付加価値加工として産業界の注目を集めている。最近の研究から、フェムト秒レーザーにより形成される微細周期構造はトライボロジー特性の改善薄膜の密着性向上生体感受性付与等に有効であることが明らかとなってきた。
ここではフェムト秒レーザーを利用した微細周期構造の形成技術とその表面機能について紹介する。

フェムト秒レーザーによる微細周期構造の形成

アブレーションしきい値近傍のフルエンスで直線偏光レーザーを基板に照射した場合、入射光と基板表面に沿った散乱光の干渉によって、レーザー波長と同程度に微細なグレーティング構造を自己組織的に形成できる。このとき、集光点をオーバーラップさせながら順次走査することで、微細構造を広範囲に安定して拡張することができる。この方法でSiウエハ上に作成した周期間隔800nm(=レーザー波長)溝深さ50nmの微細な周期構造のSEM像を[図5]に示す。本加工法では、レーザー偏光の方向制御により微細構造に任意の方向性を与えることができるため、機械加工では得がたいパターンの形成が容易である。例えば、回転部品に[図6]のような方向制御を行えば、放射、同心円、スパイラルといったユニークなパターンが作成できる。そして、この方向制御により異なる表面機能の選択が可能になる。


[図5] Siウエハに形成した周期構造のSEM像





[図6] 偏光制御による方向性の付与例

また、極低熱影響というフェムト秒レーザーの利点から、熱伝導率の高いAl(厚さ15μmのアルミ箔)などの極薄材料に本加工法を適用しても、裏面にまったく影響を与えることなく微細構造を形成できる。さらに、1光軸のレーザー照射で干渉効果が得られることから、比較的加工深度が広いという特長もある。よって、ワークディスタンス変動や高低差のある部品に対しても1スキャンで高速加工することが可能である。
実際の加工例として、Surfbeat Rで微細周期構造が形成されていく様子と、その加工結果の様々な倍率における拡大観察連続画像を以下に動画として紹介する。また、[図7−14]にいくつかの加工例を紹介する。

スペシャルムービー
左の動画はSurfbeat R により周期構造の形成加工を行っているムービーです。

再生ボタンをクリックすると動画がスタートします。
※音声はありません

スペシャルムービー
左の動画はSurfbeat R にて形成した周期構造を各倍率ごとに観察した映像です。

再生ボタンをクリックすると動画がスタートします。
※音声はありません

試料:SUS304 50×50mm×t1mm 試料:SUS304 50×50mm×t1mm

[図7] 基本波による日本地図の加工サンプル

[図8] 2倍波による日本地図の加工サンプル

試料:SUS304 50×50mm×t1mm 試料:SUS304 50×50mm×t1mm

[図9] 全面加工サンプル

[図10] 間欠加工サンプル

試料:6“Siウエハ
試料:ステンレス製スプーン

[図11] 複合加工サンプル

[図12] 3次元曲面加工サンプル

試料:SUJ2 φ12mm
試料:刃物工具鋼

[図13] 棒状部品の加工デモ

[図14] 刃先加工(刃先を800nmピッチのノコ刃状に改質)

フェムト秒レーザーによる微細周期構造の表面機能

1.摺動部品のトライボロジー特性向上
自動車や機械システムが無駄に消費する摩擦エネルギーの低減は、地球環境問題に直結する関心ですが、最適な摺動面改質により、流体潤滑膜の負荷能力や潤滑剤の保持能力を向上させ劇的に摩擦磨耗特性を改善することができる。[図15]はリングオンディスク試験において、純水中で摺動速度を1.2m/sから0.35m/sまで1分毎に減速させた場合の摩擦係数の変化を表す。一般的には鏡面同士の摺動が最も低摩擦を示すと思われがちだが、摺動する理想的平行平板同士は理論的には流体潤滑しないとされており、鏡面の試験片の場合、容易に摺動面同士が接触し、摩耗粉が生成される。この摩耗粉は試験片が鏡面同士であるため逃げ場が無く、二面間に噛み込んで摩擦係数を大きく増加させてしまう。一方、周期構造を形成した試験片は、凹部と凸部で摺動面間のすきまに差が生じ、すきまの小さくなる凸部では大きな流体圧力が生じる。この流体圧力により荷重が支持されるため、摩擦係数の低い流体潤滑状態を実現できる。




[図15]リングオンディスク試験による摩擦係数の評価

さらに適切に配置した周期構造は摺動部品の起動特性も大きく改善することができる。停止状態から摺動速度1mm/sで起動をかけた直後の摩擦係数の変化を[図16]に示す。周期構造を形成することで摩擦係数低減の応答性が非常に良くなることがわかる。
[図16] 摺動面の起動特性の評価

2.薄膜の密着性向上
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)やハイドロキシアパタイト(HAp)など優れた特性を示す薄膜が注目を集めているが、基材への密着性が十分とは言えず、高面圧下での使用において剥離という致命的な問題が生じることから、実用化が順調に進展しているとは言い難い。これに対して、基材の下地処理として周期構造を形成すると、密着面積の拡大や応力の分散・解放効果により薄膜の密着性を大幅に向上させることができる。例として、SUS304の基板に1μm厚のDLC膜を成膜し、スクラッチ試験機を用いてDLC膜の密着性を評価した様子を[図17]に示す。鏡面基板では剥離が広い範囲に及んでいるが、周期構造を形成した基板ではほとんど剥離が発生しない。SUS304基板の場合、剥離発生荷重は約3倍向上した。

 剥離発生荷重は約3倍向上した
[図17] スクラッチ試験によるDLC膜の密着性評価

3.細胞感受性の付与
チタンは生体に埋入した際に拒否反応が出ないことから人工関節や人工歯根をはじめとするインプラント材の主流となっている。近年、ナノレベルの凹凸構造が細胞感受性に影響を及ぼすことが報告されているが、チタンは加工性が悪いため、表面制御が可能なナノレベルの加工法の開発が望まれている。これに対して、本加工法は酸化進行や生体親和性低下をもたらす窒化物を生成することなく、微細な凹凸構造をチタン表面に形成することが可能であり、これを形成することで水の濡れ性に異方性を付与することができる。細胞に働く応力が細胞分裂、組織再生に対し強い影響を示すことや、細胞と基板の摩擦が細胞運動に大きな影響を及ぼすため、周期構造を形成したチタン基板に骨芽細胞様細胞を培養すると、[図18]に示すように細胞配向が可能となる。


                 (写真提供 大阪歯科大学 武田助教授)
[図18] 培養4日後の骨芽細胞様細胞

以上、早足でしたがフェムト秒レーザー加工の新たなキーワードである「微細周期構造」について紹介しました。レーザー照射した物質に誘起される波長オーダーの周期構造は、「リップル(さざなみ)」と呼ばれ古くから知られる現象でしたが、レーザー加工の微細性を阻害するものとして嫌われるノイズ的な存在でした。キヤノンマシナリーでは、この現象がフェムト秒レーザー照射でより顕著に発現することに着目し、世界に先駆けて「微細周期構造」を選択的に自由箇所に形成するプロセス技術を確立しました。Surfbeat-Rは,このプロセスの産業応用を加速させるツールであり、サンプル評価や小ロット生産に最適化した装置です。ここで取り上げた表面機能のほかにも「微細周期構造」には様々な応用が期待できます。この技術にご興味を持たれましたら、是非お気軽にお問い合わせください。キヤノンマシナリーでは、Surfbeat Rのデモ機を常時設置してサンプル加工や装置見学にお答えしています。



フェムト秒レーザー表面改質装置 Surfbeat R
フェムト秒レーザーは1000兆分の1秒という極端に短い時間単位の中に火力発電所に匹敵するパワーを圧縮した次世代の光源であり、Surfbeat Rは、その高強度性と超高速性から得られる波長程度に微細なナノサイズの凹凸構造を利用して、材料部品に多彩な表面機能を付加する改質装置です。例えば、摩擦磨耗特性の劇的な改善、薄膜の密着性や微小物体の凝着力・細胞感受性など、従来にない斬新なプロセスで様々な機能表面を提供する世界初のレーザー加工機です。


仕様
加工速度(典型値):5000line/s
加工幅:〜4mm
搭載レーザー:IFRIT ( Cyber Laser INC. )
適用ワーク:金属、セラミックス、半導体
ワークサイズ:φ250mm(最大サイズ)、100mm(最大厚さ)
外形寸法: 1380mm(W) x 1380mm(D) x 1900mm(H)
フェムト秒レーザー表面改質装置 Surfbeat R
フェムト秒レーザー表面改質装置 Surfbeat R


これらの製品に興味があるようでしたらレーザー・コンシェルジェへご連絡ください。
こちら→info@laser-concierge.com

編集部から
フェムト秒レーザーは、「多光子吸収」と言われる現象により一般のレーザーでは加工できない材料に対して、熱影響無く、またはほとんど熱影響の無い加工が可能とされ、さまざまなマーケットでの応用が期待されております。1000兆分の1という短い時間のためピークパワーは非常に高いのですが、パルスエネルギーに限界があるため加工性能の高さと引き替えに加工効率の点から産業で要求される一般的な加工(切断や穴あけ)に利用するには課題があるのが現状です。 今回の加工では材料の極表面に周期構造を刻み込んでいくといった非常に浅い領域(極表面)における溝加工のため加工速度も非常に早く、この技術を必要とする産業での応用が期待されている。現状で長さ4mmのラインを5,000本/秒という速さで加工していくためタクト的にもクリアしているであろうし、立体物への加工が可能でしかも被写界深度があるためワークのアライメントも簡易と言うことでラインで活躍する日も近いのではないかと思います。



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