紫外線(UV)レーザーユーザー訪問 |
インタビュー No.03 |
今回は特集との連動で紫外線(UV)レーザーを実際に使用し加工しているユーザーを訪問ということで、レーザーコンシェルジェ(以下:LC)では日東電工株式会社 基幹技術センター日野様を訪問いたしました。(以下:日野)
どんな経緯でUVレーザー加工が始まったか?その状況はどうか?など実際のユーザーの生の声に焦点を当てインタビューを行いました。
<インタビュー> 日東電工株式会社 基幹技術センター 日野敦司 氏
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=なぜレーザー加工が必要となったか?= LC:初めましてレーザーコンシェルジェです。 日野:初めまして LC:きょうはレーザー加工の生の声を聞かせていただければと思いますので宜しくお願いします。 日野:こちらこそ。レーザー加工マーケットが活性すれば私達にもメリットがありますから。。 LC:ありがとうございます。 では最初に、なぜ生産においてレーザー加工が必要になったのかを教えてください。 日野:それは他に方法がなかったからです。20-30μmの穴をたくさん開けようとしたときにレーザーが一番生産に使用できる可能性が高かったからなんです。 LC:その可能性が高かったというのはどこで知ったんでしょうか? 日野:それはレーザーで小さな穴が開けられますよという情報がレーザーメーカーからあって、使えるんじゃないか?やってみようよと言うところが始まりでした。計測でレーザーを使っていた私としては、レーザーが生産に使えるなんて半信半疑でしたけどね(笑) LC:それはやはりその当時のレーザーがまだまだ不安定だったからでしょうか? 日野:そうですね。とてもじゃないけど生産に使えるなって思えませんでしたよ。それまで使っていたシステムなんかを見てもたかだか数年で進歩してるとも思えなかったですしね。 LC:それでもやってみたというのは・・・ 日野:やはりレーザーでしか加工できる可能性がなかったからです。 LC:他の方法で検討されなかったのですか? 日野:もちろんウエットプロセスも検討しましたし、ドライエッチも検討しましたがどうしてもテーパーが出来てしまったんです。テーパーをコントロールできたのはレーザーだけなんですよ。ドリルやパンチングはせいぜい100μmが限界でしたから問題外でしたし。 LC:そうですか。 日野:それからレーザーは選択的な加工が出来るのが魅力でした。銅の上のポリイミドだけを除去するブラインドホール加工がレーザー加工だと簡単にできたんです。もちろんスルーホール加工もできましたし。そういうこともあってレーザー加工へ進んでいきました。 LC:ちなみにそのポリイミドの厚さはどれぐらいだったのですか? 日野:ユーザーの要求により色々でしたが25-50μmでした。最初はサンプルで色々試して“レーザー加工”結構おもしろそうだ、使えるんじゃないかと言うことで始まっていきました。
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=レーザータイプは?=
LC:レーザーはどのようなレーザーだったんですか?
日野:穴径が小さいと言うこともありエキシマレーザーとUV-YAG(266nm)でした。
=加工内容は?=
LC:加工内容はどのようなものだったのでしょうか?
日野:いわゆるVIAのようなものですね。基板が「ポリイミド-銅泊」でブライン
ドホール、スルーホールの加工がありました。銅箔に穴を開けるというのもあっ てUVレーザーという選択肢になりました。生産で使っていくにはやはり数年先を
考えつつ装置を導入する必要がありますし、途中でレーザーの種類を変更すると いうのは大変なことですから先々の可能性も検討した結果UVレーザーの導入にな
りました。
=レーザー選定のポイントは?=
LC:そのように生産で使用される際にレーザーの選定はどこにポイントをおい
ておられるのですか?
日野:まずそのレーザーでコストが合うかを計算します。イニシャルコスト、ラ
ンニングコストなど細かく計算します。そこでコストが合えば次のステップとし て安定性を見ます。
LC:企業にとってコストは重要ですからね。
日野:もちろん装置は何年かおきに見直しも行います。いいものも出てくると考
えるのが常ですから。
=レーザーメーカー等に今後期待することは?=
LC:レーザーメーカーに期待することはどのようなことでしょうか?
日野:あくまでも我々はものづくり、生産という立場でレーザーを見ていますから24時間365日問題なく稼動するの?
っていう観点で製品を見ています。ただレーザーはなかなか難しい部分も有りますので無茶を言うつもりはないですが、もう少しレーザーメーカーが情報を出してくれるといいですね。それからレーザーメーカーはもっと自分たちのレーザーがどんな風に使われているかを勉強した方が良いと思います。そうすればレーザーの正しい進化が望めるのではないでしょうか?時には出力競争するよりは安定性や価格努力をしてくれた方がユーザーとしては嬉しいですから。
LC:一般的には出力が上がれば値段も上がりますからね。
日野:でも安定性はさがる可能性が高いしスループットは値段ほど上がらないことが多い。ただユーザーも「スループットを上げる=出力を上げる」と言う考えにとらわれがちです。出力が倍になっても生産は絶対に倍にはならないですからね。本当にスループットを上げるにはどうすればいいかをもっと実証しないといけないですね。それをもとにレーザーメーカーに正しい要求をするべきです。
また出力が上がれば装置も大きくなる。クリーンルームに装置を入れる場合フットプリント(装置床面積)が大きくなるのは間接的なコストアップにつながる。レーザーメーカーは装置の小型化にも努力してもらいたい。
そのためにもUVファイバーレーザーが出来るといろんな面でメリットを感じますね。
=公的機関に求める役割は?=
LC:企業としてレーザー加工で公的機関に求めるものはどんなことですか?
日野:国の態勢にもかなり影響されていると思いますが、最先端のことだけでなく中小企業を助けてあげられる組織になって欲しいですね。現状は先端研究で論文や特許を中心に活動している公的機関が多いですが、現状のレーザー加工にももっと注力してレーザー加工が利用できるって事を証明しないとレーザー加工そのものが廃れてしまい、いくら先端の研究成果を見つけたところで、企業側は違う技術を使って物作りをすすめてしまいます。そうなっては日本のレーザー加工は手遅れです。公的機関で眠っている装置をもっと稼働させることにもなると思うので、今、企業が困っているレーザー加工にもっと積極的に参加してもらえればと思います。お金の取り方はいくらでも有ると思うので産業用のレーザー加工に積極的に関わって欲しいですね。
LC:海外はどうなんでしょうか?
日野:ドイツなんかは有料であれば論文にならない仕事や研究もちゃんとやってくれるみたいですからね。日本にもレーザー加工センターのような中心となる研究機関が欲しいですね。せっかく独立法人化されたのですから色々出来るようになったとは思うんですがね。
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=レーザー加工での苦労話は?=
LC:レーザー加工に携わってお時間が長いと思いますがこれまで苦労されたことはありますか? 日野:一般的な苦労はほとんどしてますね(笑)やっぱり会社で初めてレーザー加工を導入した時代でしたから聞く人もいないですし全部自分で考えながらやってきましたからね。何が何だかわかんないことも多々ありました。 LC:いろんな苦労をされてきたと思うのですが、これからレーザー加工をやろうとしている方々に何かアドバイスはありますか? 日野:レーザーの世界は非常に狭い世界なので情報を得るために色々ネットワークを作ることでしょうね。メーカーと色々はなしをしながら覚えていくっていうのがいいでしょうね。レーザー加工で信頼できる人を見つける事です。
=レーザーコンシェルジェへの要望は?= LC:レーザーコンシェルジェへのご要望などあるでしょうか? 日野:かなり多くの情報が揃っているのでユーザーとしては非常に役立ちます。 LC:ありがとうございます。 日野:ユーザーのコミュニケーションがとれる場があるといいかもしれませんね。ユーザー同士はなかなか接点が有りませんからユーザー同士のコミュニケーションが行えると行き詰まったときに助け合えると思いますから。 LC:なるほど。ちょっと模索してみます。
LC:本日は長時間にわたりお話ししていただきありがとうございました。今後もレーザーコンシェルジェをよろしくお願いします。 日野:webが盛り上がることを応援しています。ありがとうございました。
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