紫外線(UV)レーザーユーザー訪問 |
インタビュー No.02 |
今回は特集との連動で紫外線(UV)レーザーを実際に使用し加工しているユーザーを訪問ということで、レーザーコンシェルジェ(以下:LC)では松下電工株式会社 生産技術研究所の進藤様を訪問いたしました。(以下:進藤)
どんな経緯でUVレーザー加工が始まったか?その状況はどうか?など実際のユーザーの生の声に焦点を当てインタビューを行いました。
<インタビュー> 松下電工株式会社 生産技術研究所 進藤 崇 氏
|
|
松下電工株式会社 生産技術研究所 進藤 崇 氏
|
|
=なぜレーザー加工が必要となったか?=
LC:初めましてレーザーコンシェルジェです。
進藤:初めまして
LC:きょうはレーザー加工の生の声を聞かせていただければと思いますので宜しくお願いします。 進藤:レーザー加工マーケットのお役に立てるようであれば、話せることは話しますので質問してください。 LC:ありがとうございます。 ではいきなりですが、なぜ生産においてレーザー加工が必要になったのかを教えてください。 進藤:製品を製作する上で立体形状の回路基板を作りたかったんです。構造上露光だと難しいし、ドライプロセスで行いたかったためレーザー加工に至りました。もちろんレーザー以外にも検討は行いましたよ。
=加工内容は?= LC:実際の加工内容はどのようなものでしょうか? 進藤:樹脂の上に銅薄膜を乗せその銅薄膜を部分的に飛ばす(回路パターンの輪郭をレーザーで除去する)加工です。パターンのピッチは加工を行い始めた当時(約5〜6年前)200μm位だったためSHGレーザーを使用していましたが、将来的に微細な加工が必要になるであろうという事で、30μm程度を狙えるTHGレーザーを使用するようになりました。
=レーザー選定のポイントは?= LC:加工システムはシステムごと購入されるのですか? 進藤:いいえ。できればそうしたいところですが、発振器&スキャナ&ソフト全てを望み通りに組合す事のできるメーカさんもありませんでしたので、社内で設計を行い、レーザーと光学系は選定後購入します。搬送部分は社内で組み上げます。 LC:では、レーザーを選定する際のポイントとしてはどのような点に注意されましたか? 進藤:エンドユーザーという立場上、「仕様書のスペックでどれ位、寿命があるか」「量産(生産ライン)として24h/365日使用した場合にそのスペックが満足するか」という点にポイントにおいて選定しました。 LC:なるほど。生産は止まったら大変ですからね。 進藤:そうです。 LC:スペックで注意する点はどんなところですか? 進藤:スペックの優先順位として、「1.出力の安定性、2.LDや結晶などの交換部品の寿命、3.ビーム品質」に重点をおき、サンプル加工などの実験を何度か行いつつこれらの情報を入手します。UVレーザーの場合、実際には選定に1年ぐらいはかかりましたね。
=レーザーメーカー等に今後期待することは?= LC:選定だけでもそんなに時間がかかってしまうとは・・・ではレーザーメーカに期待されることなどございますか? 進藤:現状発振器メーカーやレーザーを扱う商社はレーザーを売り込む際「このレーザーの特徴はスペックがこうでして…」というようなスペックの紹介が多いが、エンドユーザーとしては、「このレーザーを使ってどんな加工ができるのか」というアプリケーション的な観点から売り込んでもらうと「こんな加工に使えるな」って発想しやすいですね。 LC:そうですね。展示会でもスペックをうたったパネルばかりですから売り方もそうなるんでしょうね。 進藤:あとはサンプル加工ができる場所・環境を整えてほしいですね。「この発振器良さそうだな」と思っても試せない状況が多い。それとよく「この発振器貸し出すんで使ってみてくれませんか?」というケースもあるが、実際工場で試せるかというと光学系が揃っていなかったり、人手の問題があったりと難しい。そういった意味でもメーカー側でサンプル加工ができる環境を準備してもらえると、買い手としてはデータもサンプルも揃うので購入しやすいですね。 LC:他にはどうですか? 進藤:もっと日本のレーザーメーカーにも頑張ってほしい。 LC:レーザーはやはりアメリカやドイツが強いですね。 進藤:微細加工分野でいえば海外メーカーの方が強いのが現状ですが、ソフト面(使い勝手など)や柔軟な対応力などハード面以外では日本メーカーの方が優れていると思う点もあり、日本の量産現場に本当の意味で対応ができるのは日本のメーカーだと思っています。ただ、故障した際の海外メーカのメンテナンスは、輸送して修理という手順を踏むため、復旧に時間がかかってしまいます。
最近ではレーザ選定の際には保守体制がどのようになっているかにも重点を置くようにしています。
そういった点でも日本のメーカーに頑張って貰いたいですね。
=レーザー加工での苦労話は?= LC:ところでレーザーを使用されてると色々苦労話も有るかと思いますがどうですか? 進藤:レーザー発振器を選定の際にはかなりのサンプル加工や実験を行い、その加工実験を通して加工結果やスペック、性能など良かったと思うものを採用し、これを実際に量産工場で使用するのですが、短時間での結果は実験通りに良いが、長時間使用してみるとビームが揺らいだりして歩留まり等の問題が生じてしまったりしてしまうんです。これはレーザー発振器だけでなく光学系などのマージンをどこまで持つかにもよりますが、導入当初は経験も少なく原因追及などには特に苦労させられました。 LC:レーザー加工は目に見えないですからね。 進藤:そうです、元々私はメカ屋なので、システム構築の際レーザー光の水平出しや垂直出しなどメカでは当たり前なこともレーザー光が目に見えないため慣れるまで大変苦労しました。
=レーザーコンシェルジェへの要望は?= LC:ホント苦労が絶えないレーザー加工です。最後にレーザーコンシェルジェへのご要望などがありましたらお聞かせください。 進藤:今までレーザーを選定する際など各々メーカーに直接アポを取って情報を入手していましたが、やはりかなりの時間と手間が掛かってしまいます。それをレーザーコンシェルジェのwebサイトで総括して情報が入手できればとても効率が良くなりますし問い合わせも1回で済みますのでとても便利ですし助かります。 この業界は「技術革新」のスピードが速いので、何か情報を探す時の"今"の段階で「どんなスペックのレーザーがあるか?」、「どんな新しいメーカーがでてきたか?」、「それらメーカーやレーザーの実績具合はどうか?」、「どんな得意分野のアプリケーションを持っているか?」など、必要な時に最新情報を総括して入手できるのは有難い。 LC:ありがとうございます。 進藤:上記4番でも述べたのですが、日本のレーザーメーカーを活性化させるような活動を是非行って欲しいですね。 それから、メーカーに直接コンタクトして情報を入手しようとした場合、売り手は良い事しか言わなかったり、突っ込んだ部分を教えてくれないことなども多々ある。そういった意味では情報収集の1つのツールとして、レーザーコンシェルジェが第三者機関として客観的な情報や論評などを講じてくれると有難い。 LC:是非検討していきたいと思います。 進藤:エンドユーザーの中ではシステム構築を行う際、「どんな発振器や光学系を選定したらいいか解らない」というケースや、「選定した発振器と光学系とをどうマッチング(システム構築)していっていいか解らない」などのケースが多くあると思う。これは提案でもあるが、そういう困っているユーザー向けに「システム構築コンサルタント」みたいなサービスをやってみるのも面白いんじゃないですか? LC:それはちょっとお金がいっぱいかかりそうですね(笑)でもレーザーを使う場合光学系は「つい」ですから大事だと思います。そういったサービスも行えるようになるとユーザーメリットが高まりますね。
LC:本日はありがとうございました。今後もレーザーコンシェルジェをよろしくお願いします。 進藤:ええ、どんどん利用させてもらいます。ありがとうございました。
|
|
|